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SNSは本と読者をつなぐか

 先日、Twitterで #若い編集者が知らない事をつぶやこう というハッシュタグがちょっとだけトレンドにあがりました。なかなか楽しかったのですが(多かった呟きが「愛のあるユニークで豊かな書体」と「ストリップ修正」)、「ああ、こういうタグ自体がTwitterの老化だなあ……」と思ったりもしました。
 そして今年の流行語大賞が「インスタ映え」。「どれインスタでもやってみるか」とまた大量に年配の方がInstagramに参入し、若い人が次々更新を止めているのをみると、なんだかモヤッとします。

 ※以下、SNS用語は解説抜きで記載するので、わからない場合はググってください!

 Facebook、Twitter、Instagram……。
 みなさんの会社はいくつアカウントをお持ちでしょうか。
 こうしたSNSの興隆は、「ストリップ修正」を「あったねーw」と呟ける「昔の編集者が予見しなかった事」ではないでしょうか。

 と、ここでいきなり前提をひっくりかえす「ツイッター、SNSじゃないってよ」ってご存知でしたか??
こうした呟き、まとめが周期的に拡散されます(Togetter「公式が考える「Twitterの本来の使い方」から大きく乖離した現代のTwitterの使われ方に対して様々な意見が集まる」など)。ただ、この言説の発端をたどると、ツイッターの役員が“We’re not a social network.”とインタビューで2011年に発言されたことのようで( Twitter’s not a social network? )、現在、公式に“We’re not a social network.”としているのかは不明です。リプライや引用機能など、相互コミュニケーションのツールを多く実装している以上、他の多くの方の見解のように「公式の当初の意図はともかく、現在はSNSとして機能している」と言えると思います。

 先日の、共和国の下平尾直さんの版元日誌「売人の愉しみ ——神保町ブックフェスティバル初参加の記」で、神保町ブックフェスティバルのリポートがあります。このとき、現場でひとつ話題になったのが「共和国さんや堀之内出版、タバブックスさんのお客さんは若いね」ということです。そもそもの客層もあると思いますが、名前の挙がった会社は、それぞれツイッターアカウントを日々運用しており、「Twitterでみたんですけど」と「この本ありますか?」「宮川さんいらしてるんですよね」などという声を何度か頂きました。Twitterで情報収集されているような、若い層のお客さんが来場してくださったということがひとつの要因のようでした。
 弊社は読者カードを本に挟んでいません。コストに比して利用されることは少ないからです。漫画雑誌のイラスト投稿などには有効と聞いたことがあるので、必ずしも一般的なことではないかもしれませんが、弊社に関しては読者の感想はSNSでひろえるから、という判断からです。

 Facebookは、知らない人へ広く、という拡散力は弱いように感じますが、ファン層が固まっていれば、高い確率で届けることができます。
 Instagramは、画像が主力ですので、絵本などビジュアルが強い版元は向いています。本関係だと、オシャレな書店さんが綺麗な店内とあわせて撮って下さると、すごく拡散しています。
 SNSはやはりダイレクトに読者へ繋がれることのメリットは大きいです。

 とここまで、「SNSはメリットがあるからやった方がよいよ!」という雰囲気ですが、実はあんまり強くそう思っていません。
 デメリットとしては、運用の煩雑さがあり、どこまで付き合うかは会社・人の特性や判断次第です。あまりノリがあわないのに、無理に運用しようとして、かえって印象を落とす可能性も否定できません。
 以下のアプリやサービス、皆さんの感想はおおよそ次のようなものだと思います。
 「ミクシィ」→おおやってたわ!
 「セカンドライフ」→なんか広告会社とか割と乗ってて鳴り物入りだったね!(でもやってなかった)
 「YouTube」→CMつくるところなら関係あるかもしれないけど……。でもユーチューバーとか儲かってるんだよね。
 「マストドン」→あー、聞いたことある、かな……。でもまだこれから? ほんとに流行るの??
 何に乗って、乗れて、何に乗らないか。うまくやれる場合とやれない場合があります。
 「SNS! ネット! 正直めんどくさい!」が本音、という人・会社は少なくないはずです。
 なぜ冒頭に「年配の人が参入、若い人の離脱」「TwitterはSNSを想定されていなかった」を書いたかというと、うつろう流行をとらえきれないならば、いっそやらない、も選択肢だと思うからです。なんでもやりっぱなしのウェブコンテンツがたまにありますが、これはちょっと見苦しい感じがします。
 「楽しそう!できそう!」ならやってみる。ダメだったら撤退する。
 この記事を読んでいるであろう、おそらく中小規模の版元であれば、これで十分ではないでしょうか(お金かけて担当者もつけて手配する大企業さんは少し事情が違うと思います)。
 それも必ずしも、若い人のノリに合わせなければいけない、ということではなく、年配者なりの言葉遣いや運用がかえって広い世代に届くケースもあります。
 海外のSNSをみていると、老いも若きもそれぞれがそれなりに楽しんでいるのに対し、日本ではSNSが「若者が楽しむもの」として認知され、「その若さを年配が追う」ような文脈があります。自然にそれぞれの感覚でツールを楽しむことが大事で、「若い人のまねをしてみよう」の無理も不要だし、反対に、年配の方の自撮りや雑な写真を「見苦しい」と切って捨てるような若さ・審美的な観点を至上とする物言いも、またSNSで違和感を憶えることのひとつです。
とはいえ、仕事としてのSNSであれば、一定世間の認知とつきあわなければいけないところがあり、それがまた面倒でもあるでしょう。

 最後にひとつ、最近私が楽しんでいる若い人の多いアプリとしては「Tik Tok(ティックトック)」があります。ショートビデオのソーシャルアプリで、踊りやアニメーションの動画が投稿されています。ローティーンの加工やセンスがけっこうレベル高い! 彼ら彼女らは基本的に(おそらくPCをもっておらず)、スマホのアプリで制作・加工しているようです。だから、アニメなどは、鉛筆手書きの静止画(アナログ!)の組み合わせだったりする。でもそのエフェクトの使い方は、最新で洗練されていたりします。
 刺激をうけて、新刊『ハンス・ヨナスを読む』の刊行予告PVを作成しました。
 こちら→「【近刊予告PV】『ハンス・ヨナスを読む』(堀之内出版)」
 投稿先がTik TokではなくTwitterなのは、「今」の弊社の読者は主にツイッターにいるからです。
 このアプリやショート動画の流れがこれからの決定的な流行だとは思っていません。それに私は零細企業で「編集者」の兼業として「営業的な仕事」もしている、という状態ですので、本分(本を出すこと)を優先したうえで、できることをやるつもりで、そこに全力をそそぐことはありません。

 石板から羊皮紙、紙の巻物からタバになり、何度も「電子書籍元年」がきて……。
 歴史とアーカイブ、可読性や拡散性と新しい技術。さまざまな状況のあいだで、私たちの仕事は常にあれこれの選択が提示されます。
 特に「新しいもの」との付き合い方は、とてもむずかしい。
 常に次々と生まれてきて、泡沫だと思っていたものが成長し、「これは」と思われていたものが瞬時に消えたりする。
 広告宣伝とは別の領域ですが、久禮亮太さんの著書『スリップの技法』(苦楽堂)が、出版・書店界隈で話題になっています。これもPOSデータが全盛の時代に「なぜスリップなのか」を、久禮さんは「決して懐古趣味ではない」とされています。私たちの身体もデジタル化・バーチャル化されれば別ですが、いまのところは古典物理学にガッツリしばられた有機的な心身で、スリップを身体的技法として利用したり、ツールの資産がすくない若い子がTik Tokで鉛筆画を駆使したりすることも、自然でむしろアナログな身体にとっては効率のよいことだったりします。
 それぞれの状況と判断があるなかで、「これが普遍的なベスト」と断言できることは、ほとんどありません。

 さて、みなさんはこれからSNS、デジタルとどうつきあいますか。

堀之内出版の本の一覧

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