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シリーズの創刊とU-NEXTの出版についてのお知らせ

「お世話になっております、突然で恐縮です、U-NEXTです。」
と、電話や対面で書店さんや他社さんにご挨拶しますと、ほとんどの方のお顔から戸惑いが見てとれます。
このテキストをご覧になられたみなさまも同様ではないでしょうか。

そこで、版元ドットコムの会員社のみなさまに、弊社について、また新たに創刊するシリーズについてご紹介させていただきます。

改めまして、はじめまして。U-NEXTと申します。
弊社はNetflixさんやAmazon Prime Videoさんなどと同じ動画配信サブスクリプションサービスの会社です。
弊社の最大の特徴は、A級からZ級まで取り揃えた豊富なラインナップですが、もうひとつ、同一のデバイスで映像も電子書籍も読めるというポイントも挙げられます。
そのため、たとえば「ノルウェイの森」を映画で楽しんだあと、村上春樹氏の原作をそのままスマホで読むことができます。
この機能のために、U-NEXTで電子書籍を読むという会員様も多くいます。
そういった会員様によりよいサービスを提供できないかと考え、満を持して2020年8月に「オリジナル書籍」の第一弾を発表することになりました。
現在まで町田康さんや今野敏さんなど約30名の作家さんにご尽力いただき、40超の作品を展開しております。
当初の目的として会員様へのサービス拡充がありますので、これらのオリジナルコンテンツはU-NEXT限定で展開したのち、外部の電子書籍ストアでの販売、長編に限っては紙でも販売しております。

さて、話は約2年前にさかのぼります。
2021年7月26日に李琴峰さんから原稿をちょうだいしました。
李さんは、その2週間ほど前の7月14日に『彼岸花が咲く島』で芥川賞を受賞されたばかりでした。
こちらからの依頼は当初、短編のご執筆でしたが、結果その原稿の枚数は400字詰め原稿用紙換算で151枚でした。
本作りをなさっているみなさんにおわかりいただけると思うのですが、この枚数・分量って扱いが難しいですよね。
短編としては長く、長編というには短い、紙の本にするには“厄介”な長さです。
と、思ったのですが、一方で「どうして“厄介”と思ったのだろう」と立ち止まって考えてみました。
(やや乱暴な表現になりますが)一般的なセオリーでは、新人賞や芥川賞などの受賞もしくは候補作の場合はその長さのものだけで単行本化、その場合、本文組をゆるくし、上製本にして、1,400~1,600円程度の値付けで商品化が多く、何らかの賞に関わる作品でない場合はもう一篇でも短いものを書いていただき二篇で単行本化するケースがよく見られます。
(さらに乱暴な言いかたになって申し訳ないのですが)いずれのケースも版元側のビジネス都合なのでは? と思いました。つまりは、原価率などの指標があり、その値付けや造本といった設計なんじゃないかなと。(もちろん版元側の読者へのクオリティの保証という面もありますが)
というようなことが頭の片隅にありながらも、電子書籍としては枚数など関係ありませんので、李さんと原稿のやり取りをし、デザイナーさんなどと電子書籍用の書影作りを進め、と粛々と編集作業を続けていました。
ですが、やはり「この小説、紙にできないかな?」がときどき頭をよぎります。
そこで思いだしたのが、書評家の倉本さおりさんが雑誌「文藝」(河出書房新社)でされていた連載「はばたけ!くらもと偏愛編集室」でした。この連載では、その名のとおり、倉本さんがお好きな小説を紹介しているのですが、それらはいずれも単行本化されていないものたちでした。当時、その連載を読んでいて、「ええ、読みたいのに」と残念がっていたことを思いだしたんです。もちろん国会図書館などで初出を調べ目にすることは可能なのですが、それでもアクセシビリティが悪いことは間違いありません。いち小説好きとして、もっと手軽に未収録作品に触れられたらいいのに、と感じていたのです。
同時期に、手にしたのが、辛島デイヴィッドさんの『文芸ピープル 「好き」を仕事にする人々』(講談社 2021年)でした。この本では、辛島さんがアメリカやイギリスの本作りに携わる人、現場を取材されています。そこで書かれていたのが、村田沙耶香さんの『コンビニ人間』(文藝春秋 2016年)以降、欧米のマーケットで日本人作家のノヴェラ(中編小説)が注目されている、というものでした。
これらの個人的な苦い思い出と、欧米マーケットでの日本語作品の流行から、「そうか、中編小説として独立して売り出してもいいんじゃないか」という考えにいたりました。
(じゃあ、どういう造本設計にするか、そのディレクションを誰にお願いするか、最終的な値段をどうするか、モデルとしたのは何か、背中を後押ししてくれた本等々のあれこれは、もし別の機会がありましたらお話しさせていただくとし割愛します。)

前置きがやたら長くなりましたが、そのような過程を経て、ついに李琴峰さんの『観音様の環』を4月7日に紙で発売します。

判型は四六変型(天地174mm左右112㎜)、132頁、定価990円(税込)

本作を第1弾とする季刊のシリーズは「100 min. NOVELLA(読み:ハンドレッド ミニッツ ノヴェラ)」とし、すべてのクリエイティブ・ディレクションは森敬太さんです。

第2回配本は高山羽根子さんと津村記久子さん、第3回は吉川トリコさん、第4回は高瀬隼子さんと続いていきます。
それぞれのお原稿を拝読し、『観音様の環』の見本を実際に見て、「もしかしたらこのシリーズは、はじめての李さん、はじめての高山さん、というような入り口にもなりうるのでは?」と期待も膨らんでおります。
多くの本好きの方々に届くことを切に願っています。

長々と失礼しました。
版元ドットコムの会員社のみなさまにも、弊社のこと、新シリーズのこと、是非お見知りおきいただけますと幸いです。

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