山中企画だより
もう3年前になる。飯塚書店から『「ひとり出版社」は人生の楽園』という本を出した。
ずっとフリーのライターをしていて、とりあえず出版業界とは最低限のパイプがある。だったら、この出版不況の中、自分で自由に好きな本を出せたら、と立ち上げたのがひとり出版社「山中企画」。スタートは2012年で、その時の私は57歳。で、はじめて8年くらいたったところで、その「ひとり出版社」の軌跡を振り返ったのが、『「ひとり出版社」は人生の楽園』だ。
だいたい平均的に出したのが年に4~5冊。取次コードなんて持ってないし、取りに行くほど売れる本が出るとも考えなかったために、流通関係はすべて星雲社にお願いした。で、結果的に、予想通り売れた本は出なかったし、『「ひとり出版社」は人生の楽園』も、売れなかった。
出した本の半分くらいは、著者から制作費は出してもらったり、何百冊か買い取りしてもらって、8年は乗り切った。そのあとの3年も、まあ、似たようなモノだ。もうあと2年で70歳になってしまう。好きにやってきたので、私個人は楽しいが、ろくな稼ぎもないわけだから、家では小さくなっているしかない。
で、どう好きにやってきたか、去年から今年にかけて出した本で示してみる。
去年の9月に出したのが『川岸 咨鴻伝 コサキンを「3億年許さん!」と叱責した男』。
コント55号や関根勤、小堺一機などが所属する「浅井企画」という芸能プロダクションの専務として、長年活躍したマネージャーの半生記。つまり裏方本。私は、仕事でずっと川岸さんに世話になって来たので、その「恩返し」のつもりで出した本。
11月に出したのが『タブレット純のローヤルレコード聖地純礼』。
異常な昭和歌謡マニアで、歌手兼お笑い芸人でもあるタブレット純が、ずっとこだわっていたのが、昭和40年代にレコードを出しまくり、まったくヒット曲もないまま忽然と消えてしまったレコード会社・ローヤルレコード。それがいったいどんな会社だったのかを追いまくる。ローヤルレコードなんて、わけのわからないものをほじくり返すのに魅力を感じた。
12月に出したのは『「声」に導かれて』。どこからともなく聞こえてくる声に導かれて健康食品ビジネスを始めてしまった女性が綴る、ライトなスピリチュアル本だ。これは著者がある程度買い取ってくれた。
要するに、あまりメジャー展開は考えられない「重箱のスミ」をつつく系のラインナップ。
今年4月に出す予定なのも、浅草芸人で、漫才協会に30年もいるのに、ナイツやねづっちや、後輩にどんどん追い抜かれている、ビックボーイズという漫才コンビの「なべかずお」の半生記。タイトルは『たまらんぜ! 芸人人生七転び八転び』。
売れる匂いがしない。
ただ、私自身が「売れないライター」で、「売れないひとり出版社」なので、こういう「売れない芸人」みたいな話は大好物なのだ。
さーて、あと何年「売れないひとり出版社」をやっていけるのか。特に趣味もないし、もう本出す以外にやりたいこともないので、出来る限りダラダラと続けていきたいが。