DU BOOKSは2022年4月に10周年を迎えます!
DU BOOKSはディスクユニオンの出版部です。2012年4月より部署を立ち上げ、私を含めて編集2名、営業1名のスタートでした。
4~6期目で8~10名体制となりましたが、現在はアルバイト含めて7名体制です。異業種の出版参入については、前職での課題や、これまでの失敗事例をさんざん見てきましたので、同じ轍を踏まぬよう、まずは目新しいことにチャレンジせずに、企画は、自分たちが書籍で「何を」「誰に」伝えたいのかを最優先し、長く売れること、流通しやすいことを意識しました。原価率含めて基本に忠実に運営してきたつもりです。立ち上げ当初から版元ドットコムに加えていただき、とくに営業スタッフは、持続的な出版ビジネスを続けられている先輩方に学ばせていただけたことも大きかったです。この場を借りてお礼申し上げます。
いち編集者のときはこのままだと自分の作りたい本が作れなくなるのではという危機感がありました。とくに音楽書は、本を作るだけでなく環境整備をふくめて考えないといけないと思っていました。初刷部数が年々減り続けていましたので。DU BOOKSは、ディスクユニオン(ブックユニオン)、オーディオユニオンという、テーマによっては日本でいちばん音楽書が売れる売り場を持っています。なによりお客様の購買意欲が高い。マニアックなテーマであればあるほど売れます。そのメリットを最大限に活かしたいと考えていますが、全体の比率はまだそこまで高くはないです。やはり一般書店でどう販売していただくか、最近は直取引も増えており、条件も見直しましたが、本をしっかり販売する一般書店のノウハウに学ぶこともたくさんあります。また、ディスクユニオンには時短勤務のアルバイトスタッフを含めると総勢約900名近いスタッフが働いています。彼らから出てくる企画やアイデアをいかに商業出版ベースの形にしていくかもテーマでした。つまり、「他社のやらない本を積極的にやる」ということ。個人的にはミュージシャン、作曲家だけではなく、雑誌や書籍ではあまり取り上げられてこなかった編曲家、スタジオミュージシャン、さらにはエンジニアの方々の本を出していきたいと考えていました。これについてはこの10年で一本のラインを築けたかなと思います。
そして、書籍を通じて「音楽ソフト(録音芸術)の価値を高めたい」というテーマもありました。ディスクガイドを出すと、掲載された作品の市場価格が上がるというケースがあります。これは賛否両論あるかと思いますが(これまで安く買えたのに!)、やはり優れた作品にはそれ相応の価格がつけられるべきで、どんな内容が良くても買取不可のCDなどは将来的には廃棄されてしまうでしょう。同じく大衆娯楽であった浮世絵と同じですね。数百円でも値段がつくからこそ世に残り、「アナログレコードが売れている」という報道が増えれば、家にある聴かなくなったレコードを買取に出してみようという人が増え、貴重なレコードが再び流通することができます。昨今のシティポップブームで、昔は数百円だった中古レコードに数千円~数万円という値段がついてますが、個人的にはそのくらいラグジュアリーな音が詰まっているレコードだとずっと思っていました。ちなみに、私は20世紀の複製芸術(家具など含む)のなかで最も優れた作品のひとつが、スティーリー・ダンが1977年9月にリリースした『Aja』というアルバムだと考えており(いくら高額になったとはいえ誰でも買えるのが素晴らしい)、DU BOOKSの刊行1冊目が2012年9月の『スティーリー・ダン Aja作曲術と作詞法』でした。
10周年に際して記念イベントや特別なことはなにも考えていませんが、図書目録は作りたいかも。コロナ禍でリモート会議が増え、動画や配信コンテンツに時間を割くことが増えました。全社的にはRPAも導入されました。新しいテックを編集や営業の環境改善に積極的に取り入れたいと思っています。版元ドットコムでも引き続き、みなさまと様々な情報を共有していけたら幸いです。