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薩琉軍記論 目黒 将史(著) - 文学通信
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薩琉軍記論 架空の琉球侵略物語はなぜ必要とされたのか

発行:文学通信
A5判
784ページ
上製
価格 15,000円+税
ISBN
978-4-909658-20-3
Cコード
C0095
一般 単行本 日本文学、評論、随筆、その他
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2019年12月20日
書店発売日
登録日
2019年12月3日
最終更新日
2020年1月18日
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紹介

未知なる国、異国「琉球」を侵略する、架空の軍記〈薩琉軍記〉。〈薩琉軍記〉とは、慶長十四年(一六〇九)の琉球侵攻を描いた軍記テキスト群である。実際には起きていない合戦を作りだし、様々な武将たちの活躍を創出した特異な軍記だ。本書はその〈薩琉軍記〉を研究する初の書である。
異国と戦った者たちの物語はなぜ必要とされたのか。異国合戦軍記が担った役割は何だったのか。その成立、諸本の展開構造、享受の実態から、明らかにしていく。国家の異国観が、大衆へ浸透していく様相を解明するべく、日本文学史に異国合戦軍記を位置づけようとする野心的な書。本書には、東アジアにおける日本の視座が問われている昨今、時代やジャンルを超越し取り組むべきテーマが凝縮されているといっても過言ではない。文学研究者のみならず、歴史、思想史にも有益な書である。

【〈薩琉軍記〉の物語が生長し、展開していく背景には、東アジアにおける日本の対外情勢の緊迫化があり、異国との戦さ幻想の肥大化がある。東アジアにおける日本の地位を確立する上でも、異国と戦った者たちの物語が必要とされたのである。いわば物語が語り起こされることにより、戦さの正当化がなされ、国家神話へと生長していくわけであり、時代の転換期における琉球侵攻を扱った軍記〈薩琉軍記〉は、中世から近世への言説の変遷をみる上でも重要視されるべきテキストであり、近世中、後期における時代認識を考察するための恰好の素材となりうるのである。】
「終章 琉球から朝鮮・天草へ―〈朝鮮軍記〉〈天草軍記〉への視座―」より

目次

序章 〈薩琉軍記〉研究の過去、現在
一 はじめに―〈薩琉軍記〉をめぐる先行研究―
二 〈薩琉軍記〉の定義と諸本
三 本著の構成と概要
四 使用テキストと凡例

第一部 〈薩琉軍記〉の基礎的研究

第一章〈薩琉軍記〉諸本考

第一節 諸本解題
一 はじめに
二 〈薩琉軍記〉諸本解題
三 記録・日記類―〈薩琉軍記〉以外の〈琉球侵略物〉―
四 結語

付節 立教大学図書館蔵「〈薩琉軍記〉コレクション」について
一 はじめに
二 立教大学〈薩琉軍記〉コレクション概観
三 立教本の特異性の考察
四 結語

第二節 薩琉軍記遡源考
一 はじめに
二 『薩琉軍談』と『琉球攻薩摩軍談』の考察―A群における基礎テキストの確定―
三 A群『薩琉軍談』とB群『島津琉球合戦記』の考察―〈薩琉軍記〉の祖本をおって―
四 結語

第三節 物語展開と方法―人物描写を中心に―
一 はじめに
二 佐野帯刀譚の分析―『薩琉軍談』における対立物語―
三 佐野帯刀譚をめぐる「私評」「註」
四 佐野帯刀譚の展開―新納武蔵守との対立物語をめぐって―
五 拡大する佐野帯刀の物語
六 結語

第四節 異国合戦描写の変遷をめぐって
一 はじめに
二 琉球武将にみる合戦叙述―毒矢と詞合戦―
三 張助幡譚の拡大と物語の生長
四 結語―「対外侵略物」としての〈薩琉軍記〉―

第五節 系譜という物語―島津家由来譚をめぐって―
一 はじめに
二 島津家由来譚について
三 〈薩琉軍記〉における島津家由来譚
四 島津家由来譚と物語の結末
五 「島津家由来譚」のさらなる展開―地蔵霊験譚との結びつき―
六 結語―近世期における島津家伝承へ向かって―

第二章 〈薩琉軍記〉世界の考察―成立から伝来、物語内容まで―

第一節 異国侵略を描く叙述形成の一齣―成立、伝来、享受をめぐって―
一 はじめに
二 成立について
三 基礎テキストの成立期をめぐって
四 伝来について―琉球使節到来における琉球ブームから貸本屋における軍書の流布まで―
五 伝来について―藩校・寺子屋における転写の可能性をめぐって―
六 享受について
七 結語

第二節 琉球侵略の歴史叙述―日本の対外意識と〈薩琉軍記〉―
一 はじめに
二 琉球侵略の歴史叙述―琉球・ヤマト双方の資料から―
三 〈薩琉軍記〉の語る琉球侵略―絵図にみる〈薩琉軍記〉世界―
四 結語

第三節 描かれる琉球侵略―武将伝と侵攻の正当化―
一 はじめに
二 薩摩の武将たち―新納武蔵守と佐野帯刀―
三 琉球の武将たち―異国視される琉球―
四 琉球久高の土着民と龍宮
五 結語

第四節 偽書としての〈薩琉軍記〉―「首里之印」からみる伝本享受の一齣―
一 はじめに
二 おきなわワールド本『島津琉球軍精記』について
三 「首里之印」について
四 史書としての〈薩琉軍記〉
五 偽作された〈薩琉軍記〉
六 結語

第二部 〈薩琉軍記〉の創成と展開の諸相

第一章―物語生成を考える―近世の文芸、知識人との関わりから―

第一節 近世期における三国志享受の一様相
一 はじめに―三国志の定義―
二 近世期における三国志享受
三 『通俗琉球三国志』をめぐって
四 〈薩琉軍記〉における三国志説話の展開
五 〈薩琉軍記〉に画かれる三国志―『絵本琉球軍記』試論―
六 結語

第二節 語り物の影響をさぐる―近松浄瑠璃との比較を中心に―
一 はじめに
二 近松門左衛門と三国志―『本朝三国志』の分析を通して―
三 〈薩琉軍記〉と『国性爺合戦』―〈薩琉軍記〉の琉球と近松の描く異国―
四 結語

第三節 敷衍する歴史物語―異国合戦軍記の展開と生長―
一 はじめに
二 異国合戦軍記の諸相
三 異国合戦軍記の享受をめぐって
四 異国合戦軍記の展開と生長の一齣―近松浄瑠璃との比較を通して―
五 異国合戦軍記の展開と生長の一齣―難波戦記物との比較を通して―
六 結語

第四節 歴史叙述の学問的伝承
一 はじめに
二 史書としての〈薩琉軍記〉
三 学問施設における〈薩琉軍記〉の利用
四 異国合戦言説の流行と展開
五 歴史叙述を語り継ぐ物語
六 結語

第五節 蝦夷、琉球をめぐる異国合戦言説の展開と方法
一 はじめに
二 〈蝦夷軍記〉の描く対外戦争
三 近世における蝦夷、琉球言説と新井白石
四 〈薩琉軍記〉を介した琉球認識の展開―『琉球属和録』を中心に―
五 異国合戦言説の展開とその背景
六 結語

第六節 予祝の物語を語る―〈予言文学〉としての歴史叙述―
一 はじめに
二 合戦の語り起こしをめぐって
三 合戦の予兆を描く怪異
四 命運を予告する怪異
五 暗示する故事
六 未来記の行方
七 結語

第二章―甦る武人伝承―再生する言説―

第一節 渡琉者を巡る物語―渡海、漂流の織りなす言説の考察―
一 はじめに
二 円珍伝の諸相―鬼のいる島、琉球―
三 琉球へと渡る僧たち―袋中、日秀、定西の言説―
四 僧伝から剛者譚へ―為朝渡琉譚の行方―
五 〈薩琉軍記〉における剛者譚の再生と展開
六 結語

第二節 琉球言説にみる武人伝承の展開―為朝渡琉譚を例に―
一 はじめに
二 日本(ヤマト)における為朝伝承
三 琉球における為朝伝承
四 〈薩琉軍記〉における言説の転用―為朝神格化への行方―
五 結語―中世から近世へ、武人伝承の展開―

第三節 語り継がれる百合若伝説―対外戦争と武人伝承の再生産―
一 はじめに
二 琉球遺老伝における百合若伝説
三 『琉球属和録』にみる久高島由来譚と百合若伝説
四 語り継がれる武人伝承
五 結語

第四節 為朝渡琉譚の行方―伊波普猷の言説を読む―
一 はじめに
二 為朝渡琉譚概説
三 近世における為朝渡琉譚
四 近代に語り継がれる物語
五 伊波普猷の言説を考える―琉球処分から終戦まで―
六 結語
【参考】関連年表

終章―琉球から朝鮮・天草へ―異国合戦軍記への視座―

一 はじめに―薩琉軍記研究の意義と可能性―
二 侵略文学としての位置づけ
三 〈朝鮮軍記〉〈島原天草軍記〉とのつながり―東アジアの歴史叙述をめぐって―
四 結語―異国合戦軍記への視座―

資料篇

(凡例)
 薩琉軍記伝本一覧
A1 薩琉軍談
〈甲系〉
〈乙系〉(「虎竹城合戦」の章段を欠く伝本)
〈丙系〉(佐野帯刀の討死場面など、合戦描写の増幅)
A2 琉球攻薩摩軍談
A3 薩琉軍鑑
A4 琉球征伐記(喜水軒著)
A5 琉球静謐記
B1 島津琉球合戦記
B2 琉球軍記
B3 島津琉球軍精記
増1 絵本琉球軍記
 A 天保六年(一八三五)刊
 B 天保七年(一八三六)刊
 C 安政七年(一八六〇)刊
 D 文久四年
 E 写本
 F 活字本
増2 琉球属和録(堀麦水著、明和三年(一七六六)成立、十五巻十五冊)
増3 薩州内乱記(三十巻)
増4 薩琉軍記追加
増5 桜田薩琉軍記
《参考》記録・日記類
1 喜安日記
2 琉球渡海日々記
3 琉球入(琉球軍記)
4 琉球征伐記
5 琉球帰服記
6 薩州新納武蔵守征伐琉球之挙兵
7 琉球征伐備立

翻刻凡例
1 立教大学図書館蔵『薩琉軍談』(A1・甲系⑤)解題と翻刻
2 国立公文書館蔵『薩琉軍鑑』(A3・③)解題と翻刻
3 刈谷市中央図書館村上文庫蔵『琉球征伐記』(A4・③)解題と翻刻
4 架蔵『琉球静謐記』(A5・⑧)解題と翻刻
5 架蔵『島津琉球合戦記』(B1・④)解題と翻刻
6 立教大学図書館蔵『琉球軍記』(B2・②)解題と翻刻

初出一覧
あとがき
索引(書名・人名・地名)

著者プロフィール

目黒 将史  (メグロ マサシ)  (

1979年12月21日生。立教大学兼任講師、青山学院大学非常勤講師、和洋女子大学非常勤講師。専門は日本中世、近世文学、軍記文学。著書に『シリーズ 日本文学の展望を拓く 第五巻 資料学の現在』(編著、笠間書院、2017年)、『奈良絵本 釈迦の本地 原色影印・翻刻・注解』(共編、勉誠出版、2018年)、論文に「寺院における初学をめぐって―良住堅東の例をもとに―」(『仏教文学』42号、2017年4月)、「島津義弘―島津退き口の歴史叙述をめぐって」(『アジア遊学』212号、勉誠出版、2017年8月)などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。