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木地屋幻想 桐村 英一郎(著) - 七月社
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詳細画像 0

木地屋幻想 紀伊の森の漂泊民

発行:七月社
四六判
168ページ
上製
価格 2,000円+税
ISBN
978-4-909544-08-7
Cコード
C0039
一般 単行本 民族・風習
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2020年6月2日
書店発売日
登録日
2020年5月9日
最終更新日
2020年6月2日
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書評掲載情報

2020-06-03 熊野新聞
2020-05-31 吉野熊野新聞

紹介

ロクロを発明したとされる惟喬親王を祖とし、天皇の綸旨(命令書)を携え、いにしえより山中を漂泊しながら椀や盆を作った木地屋たち。
トチ、ケヤキ、ミズメ、ブナなどの良木を求め、山々を渡り歩くその姿は、近代の訪れとともに消えてしまった。
木の国・熊野の深い森にかすかに残された足跡、言い伝えをたどり、数少ない資料をたぐり、木地屋の幻影を追う。

目次

まえがき

第一話 小椋谷再訪──木地屋の心のふるさと
第二話 大皇神社──小倉姓で固める
第三話 ハナシの話──山を降り川辺に住む
第四話 移動の痕跡──近隣に同じ名を追う
第五話 先祖への想い──一族の墓を集めて祀る
第六話 十津川の「政所」──小辺路が通る山里で
第七話 俗説の真偽──山への視線
第八話 菊の紋章──決めつけは危ない
第九話 「善吉サイ」の墓──古座の奥山に生きた一族
第十話 『紀伊続風土記』は語る──旧牟婁郡の伝承
第十一話 各地の足跡──立派な位牌残し消える
第十二話 宇江氏インタビュー──失われたものへの哀惜
第十三話 黒江は今──「木地屋」があった

あとがき

前書きなど

まえがき


「熊野には、山の漂泊民がよく似合う」

その著『富嶽百景』で「富士には、月見草がよく似合ふ」と語った太宰治ふうに言えば、そうなろうか。
紀伊国は「木の国」でもあった。太古の火山活動が造った山塊が海岸まで迫り、稲作に適した平地は少ない。紀伊半島の真ん中に位置する「果無山脈」の名の通り、深い山々と森林がそこを奈良や京都の都から隔ててきた。
熊野という地名は「クマ」と「ノ」からなる。その由来には諸説あるが、「奥まったところ」「へんぴなところ」を意味する「隈」に傾斜地を表す「野」が付いた地名という解釈が、私の実感である。

山中の漂泊民には木地屋(木地師)、農具の箕を作ったり川魚を里人に売ったりするサンカ、タタラを踏んで製鉄をする踏鞴師などが挙げられるが、紀伊・熊野の山中に多かったのは「木の国」にふさわしい木地屋たち。すなわちトチ、ブナ、ケヤキ、ミズメといった木を刳り抜いて椀や盆、杓子などを作った職人だ。一か所に定住せず、良木を求めて家族や小グループで移動した。

彼らが盛んに動き回ったのは近世だから、もはや山中に分け入ってもその姿を見ることはできない。いまあるのは、古老や祖父母が耳にした話や、墓石や位牌などそのかすかな痕跡だけである。

だが、記録に乏しく痕跡も少ないとなると、かえって知りたい、息遣いを感じたいと思うのが人情だ。それは去った者たちへの郷愁かもしれない。
熊野に暮らして十年目。これまで私はその古代の様相や黒潮が運んだロマンを探求してきたが、ぐっと時計の針を進めて、各地に木地屋の面影を追った。

著者プロフィール

桐村 英一郎  (キリムラ エイイチロウ)  (

1944年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。朝日新聞社入社後、ロンドン駐在、大阪本社、東京本社経済部長、論説副主幹などを務めた。2004年11月末の定年後、奈良県明日香村に移り住み、神戸大学客員教授として国際情勢、時事英語などを教える傍ら古代史を探究。2010年10月から三重県熊野市波田須町に住んでいる。三重県立熊野古道センター理事。
著書は『もうひとつの明日香』『大和の鎮魂歌』『ヤマト王権幻視行』『熊野鬼伝説』『イザナミの王国 熊野』『古代の禁じられた恋』『熊野からケルトの島へ──アイルランド・スコットランド』『祈りの原風景──熊野の無社殿神社と自然信仰』『熊野から海神の宮へ』『一遍上人と熊野本宮』。共著に『昭和経済六〇年』がある。

上記内容は本書刊行時のものです。