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与えるサルと食べるシカ 辻 大和(著/文) - 地人書館
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与えるサルと食べるシカ つながりの生態学

発行:地人書館
四六判
縦188mm 横128mm 厚さ16mm
重さ 270g
236ページ
定価 2,500円+税
ISBN
9784805209424
Cコード
C1045
教養 単行本 生物学
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2020年7月15日
書店発売日
登録日
2020年5月21日
最終更新日
2020年6月24日
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紹介

 ニホンザルの野外研究の歴史は長く、大きな成果を上げてきたが、研究者の主な関心は、サルの暮らしや社会に向けられていた。著者は、宮城県の金華山島で、サルのいる木の下にシカが集まり、サルが落とした葉を食べるというシーンを目撃したことをきっかけに、両者の関係に焦点を当てた研究を始める。そして、シカにとってサルが栄養状態の悪い時期に食べものを提供する存在だという、両者の片利共生関係を明らかにする。著者の興味はさらに、サルと植物の関係、そしてサルと森林環境との関連へと広がる。
 本書では、「サルを中心とする生態学」という新分野を確立した著者の20年の研究成果を中心に、フィールド研究の臨場感とともにニホンザル研究の新しい知見を伝える。さらに、猿害や外来種問題、福島第一原発事故の影響など、現代社会における人間とサルの関係についての話題に触れ、サル研究者が果たす役割を考えていく。
 野生動物相手の野外研究は成果が出るまでに時間がかかり、成果主義の昨今では敬遠されがちである。研究職のポスト不足もあり、研究者・大学院進学希望者は減少している。本書は、野外調査を積み重ねた若手研究者の成長物語であるとともに、コツコツと続けていれば自ずと道は開けると、研究者の卵たちを勇気づけるエールにもなっている。

目次

プロローグ
1章 めぐり逢い
 1・1 ピペットを双眼鏡に持ちかえる
 1・2 金華山のサル、そして高槻先生との出会い
 1・3 研究へのとびら
  コラム フィールドワーカーの七つ道具
2章 サルってどんな動物?
 2・1 霊長類とは
 2・2 スノー・モンキー
 2・3 からだの特徴
 2・4 群れ生活
 2・5 「空気を読む」サル
 2・6 サルの一生
 2・7 サルの野外研究の歴史
  コラム 調査機器の進歩
  コラム フィールドノートの中身
3章 「シカの島」のサルの暮らし
 3・1 卒業研究が始まる
 3・2 私の調査地―金華山―
  コラム 調査基地
 3・3 サルはどこだ?
 3・4 サルの土地利用
 3・5 他の群れの存在と、一時的な分派
 3・6 土地利用に見られるサルらしさ
 3・7 シカがもたらす間接的な影響
 3・8 最初のキーワード「生態系の一員としてのサル」
  コラム 野外調査の一日
4章 サルの食べものと栄養状態
 4・1 大学院で何を研究する?
 4・2 食べることは、生きること
 4・3 グルメなサルたち―四季の食べもの―
 4・4 食べものと栄養状態の関係
 4・5 初めての論文執筆
  コラム 島の夜
5章 実りの秋と実らずの秋
 5・1 二つ目のキーワード「年次変動」
 5・2 山の実りの評価
 5・3 山の実りとサルの暮らし
 5・4 恐怖の一夜
  コラム くみ取りも調査のうち!
6章 食物環境の年次変動とサルの繁殖
 6・1 博士課程での悩み
 6・2 三つ目のキーワード「社会」
 6・3 三つのキーワードを一つに
 6・4 秋の長期調査、始まる
 6・5 食べものの採集
 6・6 サルの栄養状態の評価
 6・7 フィールドワーカーのラボワーク
 6・8 神社のご利益?
 6・9 予想的中
 6・10 さよなら、「ビー」
 6・11 野外調査の成果を動物の飼育管理に活かす
  コラム 新しい分析手法
7章 与えるサルと食べるシカ―共生関係―
 7・1 ポスト・ドクター
 7・2 サルと他の動物の関係
 7・3 サルとシカの直接的な関係
 7・4 落穂拾い―食を通じたニホンジカとの種間関係―
 7・5 サルはシカの「真の友」
 7・6 「落穂拾い」がつなぐ縁
  コラム うまくいかない日もある
  コラム 私とサルの関係
8章 森にタネをまくサル―種子散布―
 8・1 植物にとって、サルはどんな存在か
 8・2 送粉
 8・3 種子散布
 8・4 サル糞の分析
 8・5 糞は情報の宝庫
 8・6 タネのゆくえ
 8・7 運ばれたタネのその後
 8・8 動物たちがつくる森
 8・9 サルのいない森
  コラム 七年目の「浮気」
  コラム 任期なしポストへの道
9章 ところ変われば暮らしも変わる
 9・1 新たな展開
 9・2 サルの食べものと暮らしの地域差
 9・3 海鮮好きのサル
 9・4 食文化?
 9・5 食生活を決めるもの
  コラム 調査中の事故と病気
10章 私たちとサル
 10・1 日本人とサルの長い付き合い
 10・2 サルに由来することば
 10・3 サルによる農林業被害と人身被害―猿害―
 10・4 猿害がもたらすもの
 10・5 対策の現状
 10・6 基礎研究の知識を被害対策に活かす
 10・7 外来ザルの静かな侵略―尻尾の長いニホンザル―
 10・8 被ばくしたサル―福島原発事故―
 10・9 社会における研究者の役割
  コラム 東日本大震災と金華山
エピローグ
あとがき
参考文献
索引

著者プロフィール

辻 大和  (ツジ ヤマト)  (著/文

 1977年、北海道生まれの富山県育ち。東京大学農学部卒業、東京大学大学院農学生命科学研究科修了(農学博士)。麻布大学特別研究員、京都大学非常勤研究員、京都大学霊長類研究所助教、中京大学非常勤講師を経て、現在石巻専修大学准教授。
 生息環境の長期的な変動と野生霊長類の採食行動・土地利用の関係、異種間の混群、種子散布について研究している。本書で解説した金華山を皮切りに各地のサルの生態を調査したあと、アフリカでの調査を経て東南アジア(主にインドネシア)に調査範囲を広げている。
 主な研究対象は、霊長目のニホンザルとジャワルトン、食肉目のニホンテン、そして皮翼目のマレーヒヨケザル。著書に『日本のサル―哺乳類学としてのニホンザル研究』(編著、東京大学出版会、2017年)、『The Japanese Macaques』(分担執筆、Springer、2010年)、『シリーズ フィールド科学の入口:食の文化を探る』(分担執筆、玉川大学出版会、2018年)などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。