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電波システム工学 電子情報通信学会(編集) - コロナ社
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電子情報通信レクチャーシリーズ D-15

電波システム工学

発行:コロナ社
B5判
縦257mm 横182mm
228ページ
定価 3,900円+税
ISBN
9784339018752
Cコード
C3355
専門 全集・双書 電子通信
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2020年10月7日
書店発売日
登録日
2020年7月29日
最終更新日
2020年7月30日
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紹介

火星基地局と通信をしたい、無線にしますか?有線(光ファイバー)にしますか?という質問にどう答えますか。 “火星と地球を光ファイバーで結ぶことはできっこないのだから有線は無理、無線しかない” という答えは横に置いておいて、もし、物理的にそれができたら、ということで。光ファイバーが低損失(1kmで数%の損失)で、きわめて優れた伝送媒体であることは良く知られている。それが火星まで引けるのなら、可能性もあると思うだろう。

ここにA地点とB地点を結ぶ回線があり、A地点から送った信号は受信点Bで1/1000の電力になるとする。その距離を2倍にして、受信強度を同じにしたいなら、送信電力をどれだけ増やせばよいか。ファイバーは1000倍にしなければいけないのに、無線(電波)は4倍ですむ(フリスの伝達公式)。さらにその2倍の距離にすると・・・。このようにして火星まで結ぶには、光ファイバーであれば、とんでもない数値になり、それゆえ、弱くなった信号を増幅する装置が一定間隔で膨大な数必要になるのに対し、電波の減衰はそれほどでもない。

これは、伝搬メカニズムの違いである。光ファイバー通信路は距離dに対して、10^-αd (α: 媒質に依存する減衰係数)のように、指数関数的に減衰するのに対して、電波ではd^-2で、すなわち、距離の2乗に反比例して減衰する。無限の彼方に情報を伝送するには、すなわち、冒頭の質問の答えとしては、電波が適している(=電波しかない)ということになる。このように、電波は宇宙の果てまでもメッセージを届ける力を持っている。宇宙のどこかに知的生命体がいるなら、そのメッセージを受け取ることができる。電波のチカラである。映画「コンタクト(Contact)」の世界が、まったく荒唐無稽(SF)とも言い切れない。

本書はこのような電波が活躍するシステムを扱っている。基礎固めなくして、応用編に位置づけられる「電波システム」を語れない。基礎編は、レクチャーシリーズの他書で触れられることが少なかった電波伝搬やアレーアンテナ技術を中心にまとめている。応用編では、多岐にわたる電波システムを総花的に紹介することを避け、電波の役割が現代に生き未来に続く主要な六つのシステム技術に絞っている。技術の変遷がめまぐるしい分野にあっても、時代に左右されない内容・根幹に横たわる不易の技術を取り上げ、20年後(2040年代)に学ぶ学生に「この本は内容が古くて役に立たない」と言わせない、と言うのが筆者等の意気込みである。

もう一点。電磁気学を含めて電波技術の発展には、その折々に道を切り開くパイオニアがいて、彼等は総じて意思も個性も桁外れであった。その生き様に触れる意味で、テーマに関連するコラム(談話室)を随所に入れている。学生諸君に、人生はこうありたいと燃えるものを感じて欲しい願いを込めて。

目次

1.電波システムとは
1.1 電波とは
 談話室 マクスウェルとキャベンディッシュ
1.2 電波の働き
1.3 無線通信早わかり
 談話室 マルコーニの挑戦
1.4 本書で学ぶこと
本章のまとめ
理解度の確認

第I部 基礎編
2.無線伝送の基本モデル
2.1 アンテナの概要
2.2 フリスの伝達公式
2.3 通信回線の性能指標
 2.3.1 EIPPとG/T
 2.3.2 受信系における熱雑音の算定
2.4 伝搬モード
2.5 基本伝搬モデル
 2.5.1 直接波伝搬とフレネルゾーン
 2.5.2 大気ガスによる吸収
 2.5.3 平面大地の2波モデル伝搬
 2.5.4 粗面散乱:コヒーレント成分とインコヒーレント成分
 2.5.5 降雨中の電波伝搬
本章のまとめ
理解度の確認

3.マルチパス伝搬
3.1 移動通信の伝搬構造
3.2 レイリーフェージング
 3.2.1 振幅・位相変動とその確率分布
 3.2.2 遅延プロファイルと周波数相関特性
 談話室 学校の運動会とワイヤレス通信
 3.2.3 到来角度プロファイルと空間相関特性
 3.2.4 ドップラースペクトル
3.3 仲上・ライスフェージング
 3.3.1 仲上・ライスフェージング環境
 3.3.2 振幅変動とその確率分布
本章のまとめ
理解度の確認

4.アレー信号処理
4.1 アレーアンテナとその働き
4.2 スペースダイバーシチ
 4.2.1 ダイバーシチの分類
 4.2.2 ダイバーシチ合成によるSN比の向上
 4.2.3 最大比合成
 4.2.4 送信ダイバーシチ
4.3 アダプティブアレー
 4.3.1 構成と機能
 談話室 伝言ゲーム
 4.3.2 MMSE規範と最適化アルゴリズム
本章のまとめ
理解度の確認

5.MIMO伝送技術
5.1 MIMOとは
5.2 MIMOの魅力
5.3 MIMOチャネルの表現
5.4 通信路容量
5.5 MIMO情報伝送
 5.5.1 固有モード伝送
 5.5.2 空間多重伝送
 5.5.3 ビームフォーミング伝送
 5.5.4 時空間ブロック符号化伝送
 5.5.5 レイリーフェージング環境での各伝送方式の通信路容量比較
本章のまとめ
理解度の確認

6.ディジタル変復調
6.1 アナログ信号とディジタル信号
6.2 バイナリ系列の無線伝送
6.3 変調と復調
6.4 ディジタル変調の基本構成
6.5 FSK
 6.5.1 FSK変調方式
 6.5.2 FSK復調方式
 6.5.3 FSKの帯域利用効率の改善
6.6 PSK
 6.6.1 PSK変調方式
 6.6.2 PSK復調方式
 6.6.3 PSKの帯域利用効率の改善
6.7 多値変調
 6.7.1 多値FSK
 6.7.2 多値PSK
 6.7.3 QAM
本章のまとめ
理解度の確認

7.ディジタル変調の誤り率
7.1 熱雑音とマルチパスフェージング
7.2 AWGN環境下でのビット誤り率
 7.2.1 FSKのビット誤り率
 7.2.2 PSKのビット誤り率
 7.2.3 QAMのビット誤り率
7.3 フェージング環境下でのビット誤り率
 7.3.1 熱雑音による誤り
 7.3.2 位相変動による誤り
 7.3.3 符号間干渉による誤り
7.4 適応変調
本章のまとめ
理解度の確認

第II部 応用編
8.移動通信システム
8.1 大ゾーン方式とセルラ方式
 8.1.1 大ゾーン方式
 8.1.2 セルラ方式
8.2 多元接続方式と複信方式
 8.2.1 多元接続方式
 8.2.2 複信方式
8.3 スペクトラム拡散
 8.3.1 スペクトラム拡散の概要
 8.3.2 直接拡散方式(DS方式)
 8.3.3 周波数ホッピング方式(FH方式)
8.4 マルチキャリヤ通信およびOFDM通信
 8.4.1 マルチキャリヤ通信
 8.4.2 OFDM通信
 8.4.3 OFDMのマルチパス耐性
 8.4.4 OFDMの応用
本章のまとめ
理解度の確認

9.自律分散無線ネットワーク
9.1 自律分散無線ネットワークとその評価規範
9.2 MACプロトコル技術
 9.2.1 ALOHA方式
 9.2.2 CSMA方式
 9.2.3 CSMA/CA方式
 9.2.4 RTS/CTS方式
本章のまとめ
理解度の確認

10.衛星通信システム
10.1 衛星通信の歴史
 談話室 October Sky
10.2 衛星通信システムの基本
 10.2.1 衛星の構成
 10.2.2 衛星通信回線
10.3 衛星軌道
10.4 回線設計
 10.4.1 電波の窓
 10.4.2 リンクバジェット
10.5 パーソナル衛星通信
本章のまとめ
理解度の確認

11.衛星航法システム
11.1 衛星航法システムとは
11.2 GPSの概要
 11.2.1 システム構成
 11.2.2 GPS電波
 11.2.3 測位の方法
11.3 単独測位
 11.3.1 測位原理
 11.3.2 測位誤差要因
 談話室 身近なところに相対性理論(アインシュタイン)
11.4 ディファレンシャルGPS(DGPS)
11.5 搬送波位相による測位・測量
 11.5.1 スタティック法
 11.5.2 キネマティック法
11.6 その他の衛星航法システム
11.7 電子基準点と測地系
 11.7.1 電子基準点
 11.7.2 測地系
本章のまとめ
理解度の確認

12.レーダシステム
12.1 物標探査レーダ
 12.1.1 レーダ断面積
 12.1.2 レーダ方程式
 12.1.3 目標物の位置評定
12.2 合成開口レーダ
 12.2.1 合成開口レーダとは
 12.2.2 グランドレンジ方向の高分解能化
 12.2.3 クロスレンジ方向の高分解能化
12.3 合成開口レーダを用いたリモートセンシング
 12.3.1 リモートセンシング
 12.3.2 日本の合成開口レーダ搭載衛星
本章のまとめ
理解度の確認

13.ワイヤレス電力伝送
13.1 ワイヤレス電力伝送の歩み
 談話室 テスラの波乱万丈
13.2 伝送方式の分類
13.3 短距離送電:磁界結合と電界結合
 談話室 ファラデーの生き様
13.4 中距離送電:共鳴送電
 13.4.1 共鳴送電の原理
 13.4.2 伝送の実際
13.5 遠距離送電:電磁波方式(マイクロ波送電方式)
 13.5.1 原理
 13.5.2 レクテナ
 13.5.3 伝送の実際
本章のまとめ
理解度の確認

引用・参考文献
理解度の確認;解説
索引

上記内容は本書刊行時のものです。