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唱歌の社会史 伊藤 公雄(著) - メディアイランド
.

唱歌の社会史 なつかしさとあやうさと

四六判
264ページ
並製
定価 2,000円+税
ISBN
978-4-904678-58-9
Cコード
C0021
一般 単行本 日本歴史
出版社在庫情報
重版中
初版年月日
2018年6月
書店発売日
登録日
2018年3月27日
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書評掲載情報

2018-09-02 しんぶん赤旗
評者: 木島章(詩人)
2018-09-02 しんぶん赤旗
評者: 木島章(詩人)
2018-09-02 毎日新聞  朝刊
2018-08-19 京都新聞  朝刊
評者: 前川喜平
2018-08-12 東京新聞/中日新聞  朝刊
評者: 伊藤氏貴(文芸評論家)
2018-08-10 週刊金曜日    8月10日号
評者: 対談 中西光雄+伊藤氏貴
2018-07-29 週刊 京都民報
評者: 北村真
2018-07-27 週刊金曜日  7月27日号
評者: 西島央
2018-07-22 熊本日日新聞
評者: 佐々木幹郎
2018-07-15 愛媛新聞
2018-07-14 東京新聞/中日新聞  夕刊
2018-07-12 山陽新聞
2018-07-11 沖縄タイムス
評者: 共同通信配信
2018-07-08 熊本日日新聞

重版情報

3刷 出来予定日: 2018-09-11
2刷 出来予定日: 2018-07-20

紹介

「唱歌」という、今までにはあまり類のない視点から読み解く日本近現代史。
ひろく愛唱されている文部省唱歌の数々には、近代国家としての「日本」および「日本人」をつくっていくという隠された目的がありました。
明治維新までは、ほとんどの日本人は「日本」「日本人」という自意識のないままに生きてきました。富国強兵策、植民地主義の中で、日本政府は、「日本人」という意識を国民に持たせる政策をとります。それが、国語読本、修身、であり、音楽=唱歌教育でした。
本書は、2015年におこなわれたシンポジウムをもとに、新規書き下ろし原稿を加えました。
今も人々に愛唱されている唱歌の数々を例示しながら、唱歌の成り立ち、植民地政策のなかで歌われた歌詞、戦後の占領政策のなかで黒塗りされた軍国的な歌詞、また官製の唱歌に対抗した「童謡」などをいとぐちに、国文学、社会学、法制史学、また詩人の立場から、近代日本の社会史を広くみていきます。
唱歌の愛好者はもとより、音楽教育、歴史教育の実践者、また、研究者にもおすすめいたします。
取り上げる唱歌は、「庭の千草」「故郷」「我は海の子」「早春賦」「蛍(蛍の光)」「あおげば尊し」「春の小川」「霞か雲か」「夏は来ぬ」「朧月夜」「浜辺の歌」「兵隊さん」「故郷を離るる歌」「里の秋」「故郷の廃家」「鉄道唱歌」ほか。

目次

はじめに 永澄憲史 

1 唱歌集 解説 中西光雄 
   庭の千草
   故郷 
   我は海の子 
   早春賦 
   蛍(蛍の光) 
   あおげば尊し 
   春の小川 
   霞か雲か 
   夏は来ぬ 
   朧月夜    
   浜辺の歌 
   兵隊さん 
   故郷を離るる歌    
   里の秋 
   故郷の廃家    
   鉄道唱歌

2 座談会 「唱歌 なつかしさとあやうさと」
   軍国主義と唱歌 
   荒地から出発した戦後詩 
   日本人の空間心性と唱歌 
   満洲唱歌と北原白秋 
   国民国家と唱歌 
   皇民化教育と唱歌 
   唱歌から童謡へ 
   兵隊さんはきれいだ、兵隊さんはかっこいい 
 「故郷の廃家」と硫黄島の玉砕 
 コラム・ミュージシャンより
  歌で導く子どもたちの明日 中西圭三
  命を大切に、人を思いあう美しい心を歌っていきたい 野田淳子
  一緒に歌うこと、そして今…… 佐久間順平  

3 唱歌の社会史  中西光雄 
4 童謡はいかに唱歌にあらがったか 白秋の場合  河津聖恵 
5 唱歌と空間心性そして植民地  山室信一
むすびに 「うた」のなつかしさとあやうさ 近代日本社会と「国民意識」 伊藤公雄

前書きなど

はじめに
この本が誕生するそもそものきっかけは六年前にさかのぼる。当時、私は京都新聞の滋賀県内の総局に勤務していた。論説委員を兼ねていたので回数は限られていたが、朝刊一面のコラムも執筆した。
二〇一二年五月下旬、翌月に何を書こうか、と思案していた時、河合塾講師(古文)の中西光雄さんが上梓したばかりの『「蛍の光」と稲垣千頴』(ぎょうせい)にたまたま出くわした。総局管内の守山市はかつて「ホタルの里」として全国に名をはせた。ホタルのシーズンも間近。「コラムのヒントが見つかるかも」と、軽い気持ちで頁を開いた。
曰く、「歌詞は四番まであり、四番は『千島のおくも、おきなわも やしま(八洲)のうちの、まもりなり……』と明治国家の意思を具現化し、卒業式などを通して子どもたちの意識に刷り込んでいった」。曰く、「一九〇五年のポーツマス条約で北緯五〇度以南の樺太が日本領となった後は、『千島のおくも、おきなわも……』が『台湾のはても樺太も』と書き換えられた」。曰く、「敗戦後、GHQの指導などにより四番の歌詞は封印され、大半の日本人は忘れてしまったが、第二次大戦で、国内で唯一地上戦が繰り広げられた沖縄の県平和祈念資料館では日本帝国主義の負の遺産として歌詞を常設展示している」―。コラムは何とか書き上げたものの、「何も知

として歌詞を常設展示している」―。コラムは何とか書き上げたものの、「何も知
湾のはても樺太も』と書き換えられた」。曰く、「敗戦後、GHQの指導などにより四番の歌詞は封印され、大半の日本人は忘れてしまったが、第二次大戦で、国内で唯一地上戦が繰り広げられた沖縄の県平和祈念資料館では日本帝国主義の負の遺産として歌詞を常設展示している」―。コラムは何とか書き上げたものの、「何も知らなかった」恥ずかしさとともに、鬱念が澱のように残った。
明治以降、現代に至るまでの教育への国家の関与に関しては、常々、批判的な視点から関心を持っていた。「唱歌」を媒介物として考えてみたら見えてくる世界があるのでは、と中西さんに話を持ち掛け、彼の寄稿による京都新聞朝刊の連載「唱歌の社会史」が一四年十月から始まった。一五年九月まで計十二回続き、中西さんは「蛍の光」をはじめ、「故郷」「春の小川」などを俎上にのぼし、四季を詠い込んだ抒情性とか懐かしさの背後にあるものに迫った。併せて日常生活や個々人の内面に与えた影響などをあぶり出していった。そして連載終了後、問題意識をより深めたい、との思いが二人の間で募り、一五年十一月、中西さんと詩人の河津聖恵さん、京都大学人文科学研究所(当時)の山室信一さん(法政思想連鎖史)にパネリストになってもらい、「唱歌の社会史 なつかしさとあやうさと」と銘打った、コンサートを兼ねた討論会を催した。
本書は、討論の中身を紹介するとともに、語り切れなかったことや、やりとりを通して触発されたことなどについてパネリストの三人と、コーディネーターを務めてくれた、京都大学教授(当時)の伊藤公雄さん(社会学)が書き下ろしている。歌詞が文語から口語に変わっていく意外な経緯、唱歌と童謡の関係、旧満州や植民地時代の朝鮮半島、台湾での唱歌的な存在の受容のされ方―などなどいずれも興味深い論考となっている。憲法改悪に向けての歩みが着実に進み、新たな「戦前」が始まった、ともされる昨今、この本から従来、あまりきちんと取り上げられることのなかった歴史の教訓をくみ取っていただければ幸いだ。奇しくも今年は明治維新から百五十年。帝国日本の産物でもある唱歌というフィルターを通して、今という時代を考え直すいい機会ではないだろうか。
最後に、コンサートで素敵な歌声を披露してくれた中西圭三さん(中西光雄さんの弟)と野田淳子さん、そして出版の話を持ちかけてくれたメディアイランドの千葉潮さん、編集作業でお世話になった中村純さんに謝意を述べたい。
(永澄憲史)

版元から一言

ひろく愛唱されてきた、文部省唱歌の数々には、近代国家としての「日本」および「日本人」をつくっていくという隠された目的がありました。本書では、今も人々に愛唱されている唱歌の数々を例示しながら、戦後、占領政策のなかで黒塗りされた軍国的な歌詞、植民地政策のなかで歌われた歌詞、また官製の唱歌に対抗した「童謡」などをいとぐちに、国文学、社会学、法制史学、また詩人の立場から、近代日本の社会史を広くみていきます。
音楽を楽しまれる方、教員ほか学校教育、音楽教育に携われる方にもお勧めいたします。

著者プロフィール

伊藤 公雄  (イトウ キミオ)  (

1951年、埼玉県生まれ。文化社会学・政治社会学専攻。京都産業大学現代社会学部客員教授、京都大学名誉教授・大阪大学名誉教授。日本学術会議会員、一般社団法人ホワイトリボンキャンペーンジャパン共同代表。主な著書に『光の帝国・迷宮の革命―鏡のなかのイタリア』(青弓社)、『〈男らしさ〉のゆくえ』(新曜社)、『「戦後」という意味空間』(インパクト出版会)など、共編著に『国家がなぜ家族に干渉するのか』(青弓社)などがある。

河津 聖恵  (カワヅ キヨエ)  (

1961年、東京都生まれ。京都大学文学部独文科卒。詩集に『夏の終わり』(第9回歴程新鋭賞)、『アリア、この夜の裸体のために』(第回H氏賞)、『新鹿』『ハッキョへの坂』『夏の花』『現代詩文庫183・河津聖恵詩集』など。評論集に『ルリアンス―他者と共にある詩』『パルレシア―震災以後、詩とは何か』『闇より黒い光のうたを―十五人の詩獣たち』。

中西 光雄  (ナカニシ ミツオ)  (

1960年、岡山県倉敷市生まれ。国学院大学大学院文学研究科博士課程後期中退。専門は日本文学(古典)・日本政治思想史。学校法人河合塾古文科専任講師。著書に『「蛍の光」と稲垣千頴 国民的唱歌と作詞者の数奇な運命』(ぎょうせい)2012年などがある。

永澄 憲史  (ナガスミ ケンジ)  (

1955年、三重県伊勢市生まれ。1980年、同志社大学文学部卒業。同年、京都新聞社入社。地方支局、東京支社、文化部などで取材に当たる。2015年定年退職。退職後も文化部専門記者として連載記事などを執筆。2003年から2005年まで夕刊に掲載した「陶然自楽 青木正児の世界」は大幅に加筆して近々出版の予定。

山室 信一  (ヤマムロ シンイチ)  (

1951年、熊本市生まれ。東京大学法学部卒。衆議院法制局、東京大学社会科学研究所、東北大学日本文化研究所などを経て、2017年に京都大学人文科学研究所を退職。主な著作に『法制官僚の時代』『近代日本の知と政治』(ともに木鐸社)、『キメラ―満洲国の肖像』(中央公論新社)、『思想課題としてのアジア』(岩波書店)、『憲法9条の思想水脈』(朝日新聞出版)、『アジアの思想史脈』『アジアびとの風姿』(ともに人文書院)がある。

佐久間 順平  (サクマ ジュンペイ)  (

佐久間順平 1953年、神奈川県生まれ。ミュージシャンとして色々なシンガーのステージやスタジオ、TV、ラジオ、映画等の音楽制作とシンガーソングライターとして活動してきた。CD「明日の想い出」「あ・り・が・と・う・の歌」に続き、2018年「生かせいのち」をリースした。

中西 圭三  (ナカニシ ケイゾウ)  (

1964年、岡山県倉敷市生まれ。シンガーソングライター・作曲家。1992年「Woman」で第回日本レコード大賞作曲賞、「ChooChooTRAIN」「Timing」「ぼよよん行進曲」など多くの提供曲がある。

野田 淳子  (ノダ ジュンコ)  (

長崎県佐世保市生まれ。シンガーソングライター。都立戸山高校卒業、(株)電通入社。フォークシンガー、ジョーン・バエズに魅了されギターの弾き語りを始める。アマチュアとして歌っている中で、上條恒彦に出会いプロの道を歩き始める。金子みすゞの詩に曲を付けた作品は高い評価を受けている。

上記内容は本書刊行時のものです。