電子書籍特別セールをやってみた
ポット出版が電子書籍を作り始めたのが2010年1月。紙の新刊とほぼ同時に電子書籍も作り、発売を始めてから4年近く立ちます。当時はボイジャーストア(現BinB store)を皮切りに紀伊國屋Kinoppy、honto、ReaderStore、BookLiveなど、今年の7月からはAmazonのkindleストア、楽天kobo、iBookstore、Google Play ブックスでも販売を始めました。いまのところ約30くらいの電子書籍販売サイトで販売しています。
今年7月24日(水)、2冊のアイドル関連本『IDOL DANCE!!!』(著/竹中夏海、紙の本は2012年12月刊行)と『アイドルのいる暮らし』(著/岡田康宏、2013年4月刊行)の電子書籍版を同時刊行しました。ちょうど、TOKYO IDOL FESTIVAL 2013(TIF2013)という世界最大のアイドルフェスティバルが7月27日(土)、28日(日)にお台場で開催されるということもあり、そのイベントに合わせ電子書籍発行記念として1週間限定で特別セールを敢行。iBookstore、楽天kobo、Google Play ブックスで7/24(水)から7/31(水)までの一週間、100円で販売しました。
ポット出版の電子書籍は、紙の本の価格が2000円以上のものをのぞいてだいたい1000円。100円ということは、定価の90%引き。電子書籍は紙の本に比べて約3割ほど安いという例が多いですが、勢いで100円特別セールとやってしまった。あとからちょっとやりすぎたと反省したのですが。
で、売れ行きはどうだったかというと、2冊とも特別セール期間中は1000DLには及ばなかったものの、これまで出している電子書籍に比べてダントツでした。もちろんポット出版の他の電子書籍に比べてということですが。紙の本の刷り部数と比較してだいたい10分の1強を1週間で売りました。しかし価格は100円……。
特別セール期間が終わって、引き続きこの3社でどれくらい売れ行きに変化があったかを調べたところ、もちろん販売数が一気におちるだろうと予想はしてましたが、見事にあまり売れていません。100円だったものが1000円になるわけですから、当たり前といえば当たり前なのかも、だけど。
いっぽうKindleですが、Kindleについては契約上末端小売価格をこちらで決めることができないので1000円のまま発売を開始。ところが、3社のセール期間が終了する7月31日(水)から3日間、2冊とも同じ100円に値下げされ、特別セールがはじまりました。うーん、他社の動向をちゃんと見てるなあ。
Kindleもまたセール期間中の売れ数はあがりました。3日間のセール期間中だけで比較すると、3社の売れ部数合計の約3割近くになっています。ただKindleの特徴は、セール期間が終わってもぱたっと売れ行きが止まるということもなく、コンスタントに地道に出ています。これがKindleユーザーが増えている証だといえるのかどうかはわかりませんが、たとえばほぼ同時期にKindle、kobo、iBookstore、Google Play ブックスでも電子書籍の発売を始めた『女子をこじらせて』(著/雨宮まみ)は、Kindleの売れ部数が他を圧倒。数はもちろんそんなに多くありませんが、途切れることなく売れています。やっぱりKindle強いなーというのが実感。ただし、他の電子書籍も同様に売れているかというとまだまだ。
ちなみに、小社は2010年から電子書籍を作ってきましたが、最初はドットブック形式で作っていたので、KoboやiBOOK、Kindleで発売できるEPUB形式の電子書籍制作はまだ9冊です。比較するにもタイトル数が少ないので、まあこれからです。
ただ、インターネット書店で売れる本は、もちろんリアル書店での売れ行きと比例してはいますが、どちらかといえば上であげたアイドル本と『女子こじ』などは、インターネット上での売れ部数の比率が他の本に比べて高い。電子書籍も他に比べて動きがいい。直木賞受賞本とか紙の本で10万部以上も売り上げる本の電子書籍は別かもしれませんが、我が社の本の場合は、インターネット上で口コミにのぼりやすいかどうかが電子書籍の売れ行きにも大きく影響するなあと実感しています。
余談ですが、先日『新文化』の記事でインターネット上の評判で増刷を決めたら痛い目にあったという話が出てましたが、確かにその通りで、しかもインターネットの世界で自分たちに見えているのはごく一部だという認識ももたなくちゃいけないのではありますが。
今回セールを実施した『IDOL DANCE!!!』と『アイドルのいる暮らし』は、twitterなどでもよくつぶやかれ、インターネット書店での売上がかなりいい本です。だからこそ、今回の電子書籍のトライアルができたという面もあります。1週間という期間、そして100円という金額がどうだったのか。セール期間を3日くらいにしておけば、セール期間外ももう少し売り伸ばしできたのか。100円ではなく半額の500円でも売り部数には大差なかったかもしれない。などなどいろいろ総括しているところです。でもやってみなくちゃわからないという点では、これからも値段も含め、電子書籍の売り方を試行錯誤してみたいと思っています。
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