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電子雑誌「fotgazet」に注目

 オンラインPDFマガジン「fotgazet(フォトガゼット)」に注目しています。もうご存じの方も多いと思いますが、ご存じない方のために紹介すると、日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)が責任編集し、2月15日に創刊号が出たばかりの電子雑誌で、「各自の自由な視点で取材と撮影を積み重ねてきたフォトジャーナリストとビデオジャーナリストが、自ら編集し発行する独自の媒体」です。「ネットメディアの隆盛は、メディアの多様性と活力を生む可能性を秘めています。そのなかで、取材し伝える責任を果たすための新しい挑戦でもあります。平和と民主主義の最大の敵は、無関心だと言われます。暮らしに直接かかわり公正さを危うくする問題は多岐にわたり、私たち自身の無関心が問われています。『fotgazet』は、写真や映像、時にはペンで、この無関心を打ち破る挑戦を続けたいと思います」と編集理念が高らかに謳われています。
 私がこの雑誌の存在を知ったのは、年明け早々でした。あるMLに投稿された案内で知ったのですが、その時点では、創刊準備号が無料でダウンロードでき、発刊リクエストが500人以上集まれば定期刊行するということでした。昨年末、9年も使っていたMac(G4)がついにダウンし新しくiMacに買い替えたばかり、容量が小さくすぐにフリーズするような劣悪な環境から一転、24インチの大画面(わが家で最大)の美しさ、快適さにルンルンしていたころだったので、なに電子雑誌?まかしといてと気軽にダウンロードしたのが出会いです。そして、まず何よりも写真の美しさに魅了され、次いで内容の重さに衝撃を受け、さらには真摯な編集姿勢に共感し、即、発刊リクエストを送ったのでした。
 実はこの雑誌に惹かれたもう一つの理由があります。それは雑誌名です。雑誌名の「fotgazet」、何語かおわかりですか。これ、エスペラント語なんです。雑誌の冒頭で「エスペラント語を語源に写真グラビア誌を意味する『fotgazet(フォトガゼット)』」と説明がありますが、エスペラント語で写真を意味する「fot」と雑誌を意味する「gazet」を組み合わせた合成語です。エスペラント語では普通、名詞の場合、語尾に「o」が付くので、ほんとうなら「fotgazeto」としたいところですが、視覚的なインパクトを考えて「o」をとった形(エスペラント語では語根といいますが)「fotgazet」にしたそうです。
 なぜ誌名をエスペラント語にしたかについて誌面では詳しく語られていませんが、すべての民族の平等と世界平和を願ってつくられたエスペラント語の理念に共感するからこそ、世界の現状を伝える雑誌の命名にエスペラント語の表記がもっともふさわしいと考えた、と聞いています。ユニクロや楽天が英語を社内公用語にするなど、ますます英語至上主義がはばをきかせている昨今、その対極にあるエスペラント語を雑誌の名前にもってくるなんて、なんとも痛快ではありませんか。
 創刊号の出た2月15日、さっそく購読を申し込み、ダウンロードしました。紙の本をこよなく愛する身としては、電子書籍を購入するなど考えてもいなかったのに、それがあれよあれよという間に、雑誌とはいえ、電子出版物を購入することになろうとは……。そんな戸惑い気分も、実際に雑誌のページを繰るうち吹き飛んでしまいました。
 「fotgazet」、すばらしいのです。準備号にもまして、写真が圧倒的な力をもって迫ってきて、思わず感嘆の声さえあげてしまいました。記事に対してコメントも書けるようになっていて、執筆者や編集者と双方向のやりとりも可能です。記事に関連する書籍など文献紹介や参考サイトへのリンクも貼られていても、読者次第でどんどん興味・関心を広げていくこともできます。まさに「メディアの多様性と活力を生む可能性」を感じました。
 年間4冊発行で、年間購読料が2400円。発刊リクエスト数は最終的にたしか700人台だったので、購読者はそれほど多くは見込めないはず、いくら電子とはいえ、これでは厳しいのではないかと想像します。当分はボランティアで運営していくようです。それでも、この「新しい挑戦」から伝わってくるのは、悲壮感ではなく、挑戦への前向きな覚悟とワクワク感。今後どう展開していくのか、発展していくのか、出版にかかわる者としても一読者としても楽しみです。
 
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